発達障害(ADHD)の115名にアンケート。仕事で1番困ったことは?
「マルチタスクが求められるようになったが、やることが多いと頭が真っ白になってしまう」
「大勢の人と関わると、緊張して疲れてしまう」
など、自分の特性によって、仕事内容や人間関係で困ったという経験をした方は多いのではないでしょうか?
今回は発達障害(ADHD・ASD・LD)の方115名を対象に、自分の障害や特性について職場やチームに伝えているのか、仕事の中でどんなことに一番困ったのか、その困りごとは解決したのかを調査しました。
アンケート概要
調査対象:発達障害(ADHD・ASD・LD)をお持ちの方
調査方法:インターネット調査
調査期間:2023年10月31日~2023年11月14日
調査人数:115名(男性50名 女性65名)
年代:10代(4名)・20代(38名)・30代(45名)・40代(20名)・50代(8名)
1. 年齢を選択してください
2. 性別を選択してください
3. 障害者手帳はお持ちですか?
4. 自分の障害や特性について職場やチームに伝えていますか?
5. その理由を教えてください
6. 仕事で最も困ったことはなんですか?
7. 具体的にどんなことに困りましたか?
8. 上記の悩みは解決しましたか?
障害者手帳を持っている人は30%未満!
・持っている 33票(28.7%)
・持っていない 82票(71.3%)
障害者手帳を「持っている」と答えた方は、たったの28.7%。
障害者手帳を「持っていない」と答えた方は71.3%。
「持っている」と答えた方に比べ2倍以上の差があり、発達障害と診断を受けていても障害者手帳を取らずに生活をしている方が多いということがわかりました。
約6割が自分の障害や特性を周囲に伝えていない。
・伝えている 41票(35.7%)
・伝えていない 74票(64.3%)
自分の障害や特性を職場やチームに伝えている方は35.7%に対し、伝えていない方は64.3%でした。
障害者雇用枠や就労継続支援事業所で働かれている方は、障害や特性をあらかじめ説明している方が多かったです。
なぜここまで違いが現れているのでしょうか?
伝えている方、伝えていない方の具体的な理由を見ていきましょう。
障害や特性を伝えている人のコメント
女性・20代
特性が作業に影響することがあり、知っておいてもらわないと逆に迷惑をかけるから。
男性・20代
障害の弱みと強みを理解してもらうことで、職場で力を発揮できるため。
女性・30代
伝えていた方がいざなにかあったときに対処しやすい
女性・30代
後から知るより初めに知りたかったと言われた事があったから。
また障害や特性を伝えなければ周りに迷惑をかけると思い、伝える方がいる一方、障害の強みと弱みを伝えることで、力を発揮できると考える方もいました。
「後から知るより初めに知りたかった」と言われたことがある方もいるそうで、人によって障害の捉え方は違うので、周囲に伝えるかどうかの判断が難しいようです・・・
障害や特性を伝えていない人のコメント
女性・30代
理解をしてもらおうとこちらが思っていても、相手(職場や上司)から特別扱いできない、みんな頑張っているんだからと言われ、理解されないことに気づき諦めました。
男性・20代
仕事を振られなくなる可能性があると考えられる。
働きにくい環境になってしまう。
女性・30代
偏見があるからです。あと、顕著には出ていないので今のところ仕事への影響はでていないので伝えていません。
女性・20代
個人面談で上司に相談したことがありますが他人から見て心配ないから公言せずそのまま働いていいと言われました。
私自身は周囲に特性を知ってほしかったのですが。
男性・30代
まだ普通の人として認められたい気持ちが強いから。
障害や特性を伝えることで、仕事が振られなくなってしまったり、今の地位からおろされてしまうのではないかと不安に感じ、伝えないと考える方もいました。
また特に業務に大きな影響がないため伝える必要がないと考える方や、他人から見て支障がないため公言しなくてよいと言われた方も。
「恥ずかしい」「普通の人として認められたい気持ちが強い」など障害を公言するかどうか、葛藤をしている様子もありました。
職場や上司・同僚が理解のある雰囲気なのかによって、障害や特性を伝えるか、判断が大きく違うのではないでしょうか。
仕事で一番困ったこと第1位は「仕事内容」
1位:仕事内容 53票(46.1%)
2位:対人関係 33票(28.7%)
3位:体調管理 14票(12.2%)
4位:職場環境 7票(6.1%)
5位:勤怠 3票(2.6%)
6位:通勤 2票(1.7%)
7位:その他 2票(1.7%)
8位:まわりに相談できる環境がない 1票(0.9%)
※小数点第2位以下は四捨五入
1位は、「仕事内容(マルチタスクが求められるなど)」でした。
2位「対人関係(上司や部署内での人間関係など)」、3位「体調管理(不調に気づきにくい・疲れやすいなど)」、4位「職場環境(周りの音が気になるなど)」、5位「勤怠(休みが取りにくい、遅刻、早退など)」と続きます。
特に上位2つは、自分の事情だけではコントロールができない部分なので、悩んでいる方が多いのかもしれません。
では具体的にどんなことに困ったのかを見ていきましょう。
1位:「仕事内容」の困りごと
女性・30代
会議で話を聞いていても分からないことが多々あり、その場や後で質問ができない。質問が出来ないからミスを連発したりする。ミスを指摘されると落ち込んでしまい次の仕事に集中して取り組めない。
男性・30代
マルチタスクがとても苦手なのですが、次々と業務を伝えられしまった時には、どうすれば良いのか分からずパニックに近い状態になります。
女性・30代
きちんと書類を作ったつもりでも、ミスが多くて、見直すのに時間がかかります。また、見直しても、後で漏れや間違いがあることがあります。
そのほかにも電話対応など臨機応変に行動することが苦手で困っているという方もいました。
2位:「対人関係」の困りごと
女性・30代
冗談を真に受けてしまう(言葉通りに受け取ってしまう)ところがあり、冗談なのか本当なのかわからず、返事をしたら誤解されて孤立してしまったり、人間関係が複雑な環境(空気を読まないといけない、言葉の裏が分からないような難しい表現や言葉を使ってくる等)で精神病みました。
女性・20代
うまくコミュニケーション取れない。別のことに対してイライラしてる上司の態度がそのことに対して無関係な自分に向けてではないかと思い込み話しかけづらい。うまく言葉に表せられない。
男性・20代
返事内容が思い浮かばず、黙ってしまって気まずくなること。
また上司が怒っているのは自分のせいではないか、自分のコミュニケーションの仕方で相手が嫌な気持ちになっているのではないか、という不安から対人関係に悩んでいるケースも多かったです。
3位:「体調管理」の困りごと
男性・30代
いつの間にか、身体の調子が悪くなっていき、仕事するのが、困難になっていきました。
女性・30代
仕事のミスや漏れがないか人の倍を意識してチェックを繰り返しているので一日の終わりにはすごく疲れる。
男性・30代
次の日に何か重大な業務があるときには、ほぼ100%体調崩します。
さらにそのことばかりを考え、寝れなくなったり、寝過ぎたりしてしまうので、不安でかなり早い時間に出社したりしてしまいます。
また自分の限界に気づかず、いつの間にか体調を崩していたという方も。
周囲に迷惑をかけないように気を張って、疲れてしまい、体調を崩し、自分を責めてしまうという負のループになってしまうケースもあるようです。
4位:「職場環境」の困りごと
男性・30代
音に敏感で、パニックになることもある。
女性・30代
工場なので黙々と作業をする場面が多いのかと思っていたら、ワイワイと喋りながら業務をしてて、集中してできる環境ではなかったこと、雑談の内容が耳に入ってしまい集中できなくて苦労しました。
女性・30代
搬入や営業の方がよく来る職場だったので、音が気になり作業に集中しづらくてミスをすることがありました。
また、テレビを小さな音でつけているのが好きな人がいたので、常にボソボソ人の声が聞こえて、職場の人の声と混ざって困りました。
見た目では分からない特性のため、周りに理解してもらうのは難しいようです。
5位:「勤怠」の困りごと
男性・30代
業務が非効率で時間がかかってしまうため、業務過多、かつ有給取得も出来ず、結果身体に支障を片してしまった。
女性・30代
ストレスがたまっていると、ほぼ毎日遅刻してしまうこと。時間の管理が難しい。
その悩みを解決していない人が半分以上…
・解決した 11票(9.6%)
・ある程度解決した 40票(34.8%)
・あまり解決しなかった 44票(38.3%)
・解決しなかった 20票(17.4%)
「ある程度解決した」と「あまり解決しなかった」にあまりは差はありませんでした。
ですが、全体でみると「解決した」が44.4%、「解決しなかった」が55.7%で、半分以上の方が解決しなかったと感じています。
まとめ
① 6割以上の人が障害や特性を職場やチームに伝えていない
②「仕事内容」「対人関係」「体調管理」で困っている方が多い
③ 5割以上の人が悩みを解決できていない
障害者手帳を持っていても、障害や特性を伝えると「就職ができない」「今まで通りに接してもらえなくなるかもしれない」などといったマイナスな影響から伝えていないと言っている方が多かったです。
それに対し、障害者手帳を持っていなくても、「伝えやすい雰囲気だった」「迷惑をかけるかもしれないから伝えている」などといった職場やチームが障害や特性に理解があったり、障害や特性を伝えないことで回りに迷惑をかけるのではないかと考える方は伝える傾向にありました。
見た目では分からない障害や特性のため、「理解されないのではないか」「言い訳だと思われる」と思い、職場やチームに伝えるのは勇気がいるでしょう。
もちろん職場やチームが理解してくれる環境を作ってくれることが一番ですが、現状なかなか難しいと思います・・・
自分を大切にするといった意味で、「ミスしやすいので、一緒に確認してもらえますか?」などと特性を柔らかく伝えてみることも1つの方法なのではないでしょうか。